自己破産したくない
「結局、努力したが自己破産は回避出来そうにないってのが現状か。くそっ、俺の力不足のせいで!」
「お兄ちゃんは十分やったわよ。自己破産回避の為とはいえ高校行きながらバイト料が月20万超すなんて、普通に偉業だと思うわ」
「褒めてくれるのはいいんだが、ところでその赤黒く汚いズタ袋はなんだ? あとなんでバットを持ってるんだ?」
「素振りしてたのよ。ダイエットもかねて。いやぁー、いい運動になったわ」
「そうか。ところで最近のバットは赤いんだな。兄ちゃん、知らなかったぞ。学校ごとに染めるのか?」
「そんなことより、お兄ちゃん。自己破産ってことは、もうこの家に住めなくなるんだね」
「車も没収だろうな。あと他にも色々となくなるんだろうな。自己破産はそう言うモンらしいし」
「ウチって、他にいい感じに高い財産なんて、あったっけ?」
「さぁ? そう言えば、知らんな。ちょっと調べてみるか。自己破産の手続きは別に今じゃなくていいんだし」
「何か売れるものがあれば、売っちゃおうよ。私としては、家とケータイとエアコンとパソコンと……」
「つまり、自分の部屋にある大事なモンさえ残れば、他は自己破産対策に売ってしまっていいんだな?」
「そーゆーこと。それじゃ自己破産対策のため、我が家のお宝探検に出発! まずはお父さんの部屋ね」
「…………むぅ? この絵、高いのか? あとこっそり保存してあるワインとかって、売ろうと思えば売れるのか?」
「ネットオークションに出してもいいかもね。それなら、お店に流すよりいいと思う」
「そうだな。とにかく自己破産にならないよう、今は返済資金がいるしな」
「何かこう、返済が一発で済むようなお宝ってないのかしら?」
「そんなモンがあれば、もうとっくに自己破産問題は解決してるぞ」
「お父さん自身、隠してて忘れてる財宝とかさぁ…………あっ! これなんてどう?」
「記念コインか。高いやつは1枚で10万を越えるというな。よし、オークションだ」
「お父さんの部屋を全部オークションにかけたら、意外と何とかなるんじゃない?」
「そうかもな。でも、親父の外出中に無許可でやるのは、自己破産回避のためとは言え、心苦しいな」
「いいわよ、別に。自己破産の回避は、我が家の宿命だもの。お父さんもきっと分かってくれるわ」
「んー、それもそうか。ところで、さっきからそのズタ袋、動いてないか? と言うか、唸ってないか?」
「気のせいよ。別に誰かが中に入ってるわけじゃないんだし。きっとお兄ちゃん、バイトの連続で疲れてるのよ。
ほら、バッドで突いてみても、飛び跳ねたりしないでしょ? ただのズタ袋よ、これ」
「そう言えば、バットは素振りで納得したが、何で袋を持ってるんだ?」
「走るときの重りよ。ほら、マンガでタイヤを引きずったりするじゃない。これも同じ。町内10週、引きずったわ」
「むぅ、そうか。あんまり無理な運動はするなよ? まぁ、俺は人のことは言えんが」
「まったくよ。お兄ちゃんは自己破産の話が出てから、バイトしっぱなしだもん。私のことより、自分の体を心配してよね」
「じゃあ、今日は早く寝ることにしよう。後のこと、全部任せていいんだろ?」
「うん、オークション出展は任せて。ちゃんと滞りなく、やっておくから。何てったって、自己破産を回避するためだもんねー」
「頼むぞ。これだけ売れば、何とかなるやも知れん。それにしても、意外と自己破産親父は物持ちだったんだな」そんなわけで、青年と少女は父親の書斎の品を売りつくすのだった。
頑張れ、青年。少しだけ自重しろ、少女。自己破産父親はどこか薄暗いところで泣いているぞ。
でもまぁ、何だかんだで自己破産が回避出来そうな気配なので、それでいいじゃないか。
そう思わなくもない、今日この頃でした。