自己破産と対決
「むぅ、もはや我が家に残された道は、自己破産しかないのか」
「自己破産だって? 親父! 日曜の朝っぱらから、どうして自己破産だなんて、不景気な単語を呟いてるんだ!」
「くっ、父の呟きを聞いていたのか、息子よ! 出来ることなら、自己破産などという情けない言葉は、一生聞かれたくなかったが」
「だったら、リビングでこれ見よがしに肩を落として、苦悩の表情なんか見せるなよ! 普通に気になるだろっ!」
「そ、そうか。私はそんな態度を取っていたのか。度し難いな、我ながら。自己破産を前に、心底弱気になっているのか」
「弱気だなんて、不屈で闘志溢れる親父らしくないぞ! 自己破産がなんだってんだ! 笑えよ、その程度の逆境なんて!」
「ふふふ。さすがは我が息子だ。勢いがある。しかし、勢いだけではどうにもならんこともあるのだ」
「それが、我が家の自己破産だってのかよ?」
「そうだ。言わば我が家は、大型隕石の激突を目前とした地球だ。逃げ場はない。隕石をどうこうするには、人類には荷が重すぎる」
「って言うか、例え話が無駄に壮大だぞ、親父。自己破産ってことは、我が家に降りかかるのはただの借金だろう?」
「その借金が強大過ぎるから、こうして苦悩しているのだ。もう、どうにもならんのだよ、息子よ」
「借金がなんだ! いや、たとえ隕石だとしても、俺は諦めん! たかが石ころ一つくらい、勢いだけで大気圏外へと押し返してやる!」
「無理なのだよ、息子よ。そんなことは、到底不可能なのだ」
「男は度胸! 何でもまず試してみるさ!」
「そうか。ならば、お前のその意気込みにかけてみよう。自己破産は、本当に最後の手段だ」
「ああ、傾いた我が家の財政くらい、俺の意気込みで直してみせる! 俺の勢いは、伊達じゃないぜ!」
「分かった。任せるぞ、自慢の息子よ!」
「あぁ、俺の救済を、特等席で見てやがれよ、親父!」
そんなわけで、一人の青年が自己破産という運命に立ち向かう決意が完了したのだった!
頑張れ、青年。負けるな、青年。自己破産なんて、何のそのだ!